《MUMEI》

白いワンピースが
風で優しく揺れる。
くせのある千尋の長い髪も、フワフワと揺れる。

いつもの河原。千尋は顔を左右に巡らせる。いた!約束通りの時間に彼は来ていた。
「大和!」
俯いていた大和が顔を上げ、千尋の姿を見つけて、笑顔で片手を上げた。
千尋は大和の元へ急ぎ足で近付こうとする。
「千尋、こっち」
笑顔の大和が声かける。
急ぎ足の千尋はいつしか駆け出していた。でも大和に近付かない。
「大和!」
千尋は暗い空間に手を伸ばしていた。その手は何も掴んでいない。大和の手も。
「また…見ちゃったんだ…」
夢。大和と最後に過ごした日の、夢。
千尋は繰り返し繰り返し、その夢を見ていた。
大和はもういない。頭ではわかっているのに心が認めてくれない。寂しさが胸に染み入る。千尋は月明かりが差し込む窓に目をやった。
「大和…」
込み上げる寂しさに胸を締め付けられ、千尋はやはり涙がにじんだ。

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