《MUMEI》
日常
日々変わらず日常は流れていく。千尋は風に揺れるカーテンと窓の外を頬杖ついて眺めていた。
「ちーひろ!」
飛び付くように友達の美紀が抱き着いて来た。
「何見てたの?」
屈託なく美紀は笑顔で千尋の視線の先を追う。
「いい天気だなと思って」
千尋はついつられて笑顔になる。
「あ、三年生体育じゃん。千尋のお兄ちゃんいるよ」
言われてみれば聡がグラウンドにいる。
(本当なら大和もあそこに…)
無意識に千尋は大和を想う。涙が滲みそうになるのをグッと堪えた。今、大和のことを心の片隅にでも想ってる人は、一体何人いるんだろう。大和は人気者だった。負けず劣らず聡も人気者だ。大和や聡に恋心を持っていた女子は少なくない。しかし大和がいなくなって一ヶ月。その人気はいつの間にか聡に集中していた。
「そういえば大和くんも人気あったね。千尋、彼女彼女宣言された時大変だったもんね」
そう言って美紀は千尋の顔を見て慌てて
「ごめん!そんなつもりじゃなくて…」
「え?」
美紀の焦りに初めて堪えていた涙が零れていたことに気付いた。
「大丈夫よ。ただ…今大和のこと覚えていてくれてる人、どのくらいいるんだろうって考えたら…」
千尋の涙は止まらなかった。今やポロポロと零れ落ちている。大和が不憫でならなかった。みんなの記憶から日一日と消えていく、大和が不憫だった。
美紀はかける言葉が見付からず視線をグラウンドに移した。千尋の視線は空に向けられていた。
それが今当たり前の日常だった。

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