《MUMEI》 そう言って、フロントにいた、『支配人』のバッチを付けた老紳士はニッコリと微笑んで、私に鍵を渡した。 「ありがとうございます」 「プールは、地下になります。お気をつけて」 私は、早足で地下に向かった。 (良かった、いい人で) そして、プールに続く更衣室の鍵を開け、フロントで言われた通り、電気を端から付けた。 (わぁ…) 水はまだ止めていないところだったので、シャワーもミストサウナも、プールの近くにあるジャグジーも動いていた。 私は、いそいそと、持ってきた水色のビキニに着替えた。 シャワーを浴び、プールに足を浸けると、丁度いい水温だった。 (よし、泳ぐぞ!) 私は張り切って、夢中になって五十メートルプールを得意な自由形で泳いだ。 「フゥッ…」 端に手を付いてから、泳ぎを止め、水面から顔を上げると… 上から拍手が聴こえた。 「いや〜、さすが、俺のマーメイドちゃん」 飛び込み台に座って私を見下ろしているのは 「俊彦…」 いつの間にか、浴衣に着替えた俊彦だった。 ただし、顔のメイクはそのままだった。 そして、俊彦は浴衣のまま、プールに飛びこんできた 前へ |次へ |
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