《MUMEI》

「ダメだったらぁ!」


「まぁまぁ、ほら、怖くないよ〜、口、開けて?」


私は、俊彦の腕の中で暴れながら、口をキュッと閉じていた。


「も〜、仕方ないな…」


俊彦は、プールサイドに置いてあるお銚子に手を伸ばした。


(絶対! 飲まない)


私はそのお銚子が、自分に向けられるのを予想していた。


しかし、俊彦は、その中身を、日本酒を自分で飲んだ。


次の瞬間。


「ン〜……」


俊彦が、口移しで日本酒を私の口の中に流し込んだ。

(飲み込んだら、…終わりだ)


私は俊彦から離れようともがいたが…


俊彦は、私と唇を重ねながら、私をしっかりと捕まえていた。


そして、とうとう…


ゴクンッ…


私は日本酒を、飲み込んでしまった。


そこから先は、全く覚えていない。

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