《MUMEI》

その後も吐きそうなくらい走り続けた。


それでも休む気になんてならなくて、ただ佐久間さんを目指して走った。





ゼェーハァ ゼェーハァ ゼェーハァ


やっと・・・着いた・・・


ゼェーハァ ゼェーハァ ゼェーハァ


この年になって、こんなに走るなんて思ってもみなかった・・・


あまりの苦しさにマンションの前で座り込んだ。


そして、マンションを見上げて


「佐久間さん、まだ出発してないよね?」


願う気持ちで呟いた。



少し息も落ち着き最後の気力を振り絞って立ち上がる。


そして気を取り直しエントランスに入った。


郵便受けを見ると、佐久間さんの名前はまだある。


良かった・・・


少し安心して、インターホンの操作盤の前に立つ。


「その前に・・・こっちを片付けないとね」



私は太一の部屋の番号を押した。

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