《MUMEI》

「お帰り〜。どうしたの?急に来るからびっくりしたよ」


太一はだらしない恰好で出てきた。


「ごめんね・・・」


突然押し掛けて来た用件が用件なだけに恐縮する。


「まぁ座りなよ。コーヒー淹れるから」


「あ、すぐに帰るから・・・いいよ」


コーヒーの準備をしようとする太一を止めた。


「え?そうなの?何それ」


太一は少し残念そうな顔をして座る。


「急に来てすぐに帰るなんてごめんね・・・」


「本当だよ。まったくもう。で、どうしたの?」


太一は胡坐をかいてニコニコしながら私の言葉を待っている。


その姿を見ると、なんだか言いだしづらかった。



「あのね・・・今日は、、、プロポーズの返事をしに来たの」


太一の目つきが変わる。


「私・・・」


太一に凝視されてるのが分かって余計に言いずらい。



「ごめんなさい。太一とは結婚できない」



太一の目を見ずに俯いて言った。



太一が何も言わないので、もう一度謝った。



「本当にごめん・・・」





少ししてから、やっと太一が口を開いた。


「それって、佐久間さんのことが好きだから?」

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