《MUMEI》

私は心も体も満たされ、佐久間さんのことがいとおしくて仕方なかった。


「大好き!」


気持ちが高ぶって、また佐久間さんに抱きついた。


佐久間さんは私の髪を撫でながら、


「俺も好きだよ…」


そう言った後に、


「ずっと好きだって言いたかった…もう割りきった関係なんて嫌だよ…」


付け足した。


私はそれを聞いて切なくなった。


今まで一緒にいる時間はたくさんあったのに…なんで自分の気持ちに気が付かなかったんだろ…


時間を無駄に過ごした気がしてならなかった。


やっと心を通わすことが出来たのに…いつ日本に帰るか分からないなんて。


そう思うとまた涙ぐむ。


「愛加…?泣いてるの?」


佐久間さんが気づいて心配そうに私を見つめる。


「エジプトに行っちゃうんでしょ…」


「うん…明日発つよ…」


明日…


部屋を見渡すと大きなスーツケースが開いた状態で置かれている。


「もしかして準備中だったの?」


「うん……、でも大丈夫。後でやるから」


「ごめんなさい…私が突然押し掛けたから…」

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