《MUMEI》

「だから、いつもと違ってしおらしかったんだ!」


佐久間さんは謎を解き明かしたように嬉しそうだ。


「当たり前でしょ!じゃないと……」



気づかなかったかも…



「なんだよ?さては言って損したとか思ってるな!?」


「そうよ。あーあ、損しちゃった!私の気持ち返してよねっ。騙されたわ」



この期に及んで私、何バカなこと言ってんのよ!?



でも佐久間さんは…


「返すわけないだろ!!やっと手に入れた愛加の気持ちなんだからっ」


って、笑いながら私の暴言を包み込む…



あっ!私…そういうとこが好きなんだ!!



「じゃ…そろそろ行くよ」


佐久間さんは、さりげなく私にキスをした。


「ちょっと、こんな公衆の面前でやめてよ」


しかし佐久間さんは気にせず笑顔で「じゃ…」と言って歩き出す。


私はそんな佐久間さんの背中を見つめながら、思わず名前を呼ぶ。



「佐久間さん!」


佐久間さんは振り返る。


その笑顔を見て私は大声で言った。



「大好き!」







【おわり】

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