《MUMEI》

   〜歩視点〜


麗羅チャンが出て行ってから、あれこれ頭で考えているうちに担任が俺の目の前に立ち、手をひらひらさせていた。


「うっわ!!!先生何してるんですか!?人の真ん前で・・・」


俺は驚きの余り、声を上げてしまう。


「何してるかだと・・・?お前がチャイムがなっても声をかけても微動だにしないから、立ったまま寝てるのかと思ってな」


担任は、ニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべた。


クラスメイトは、俺と担任のやりとりを見てくすくす笑っている。


「中原・・・それより」


担任が重大なことを伝えるかのように、真剣に重々しく口を開いた。


そんな担任の様子を見て俺の頭に、不安がよぎる。

俺なんかしたっけ・・・?


「ホームルーム始めていいか?」


先程の重々しさなど一切感じさせず担任は、軽い口調で言った。


「も〜〜〜先生驚かさないで下さいよ!」


俺は、緊張の糸がほどけ脱力した笑みを浮かる。


「ほら早く席に着け!ホームルーム始めるぞ〜!」


担任に促され、俺が席に戻ると小湊さんが振り返り俺に質問をしてきた。


「中原くんどうしたの?ぼ―っとして。何かあったの?」


「いや別に・・・」


っと言い掛けて、小湊さんが北川 真星について教えてくれた子なのを思い出す。


「あのさっ北川 真星のことなんだけど・・・」


聞くのを少し躊躇いながら俺は口を開く。


「えっ何?惚れちゃったの?」


その子は、冗談っぽく俺に質問してくる。


「んな訳ないだろ!俺は麗羅チャンのことが・・・」


予想してなかったその子の言葉に俺は立ち上がり、大声で否定していた。


担任と目が合う。俺は引きつった笑顔を浮かべる。


「中原・・・本当に大丈夫か?何なら保健室行ってきてもいいぞ?」


担任は少しあきれたような口調で、しかし心配そうに言った。


「中原くん熱があっておかしいみたいなので、保健室連れて行ってきます」


小湊さんが手を挙げて担任に申し出ると、担任はそうかっとだけ言って話の続きをし始めた。


俺は、小湊さんに半ば強引に保健室へと行かされることになり、教室を後にした。

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