《MUMEI》

限界……

「ふ…………ヴェっ……」

上着を脱いで私の顔に近付ける。

「どうぞ。」

背中を摩ってくれていることがわかる。

私はそのまま、胃にあるもの全てを吐き出した。

息が整わない。
自然と水を渡してくるので飲み干す。

「何ヶ月ですか?」

そう聞かれて私はずっと前から決めていた答えを使う。

「――――三ヶ月よ」

ほら、見てごらんなさい。私は貴方に勝ったのよ。
私は貴方の幼なじみの亡くなった一ヶ月の間に昭一郎さんと愛し合ったの。



「――――――旦那様には言いましたか?
今、貴方に必要なものは身近に付いてくれる人でしょう?
それは、自分じゃ無い。」

エスコートされながら外まで出ていた。
夜風が気持ちいい。

「お会計は要りません、その分、タクシー代に使って下さい。」

私に笑いかけた顔がかえって怖かった。
……どういう意味なの、宣戦布告?

「…………愛し合っているのよ。」

分かるでしょう?昭一郎さんには手を出さないで。

「そうですね。貴方は幸せ者だ。」

笑わないで、本当は別のこと考えているくせに。
取らないで……。

「……来ないで」

タクシーまで支えてくれた手を振り切る。

私に触らないで。

タクシーに乗り込み行き先を言う。





私は知ってるわ。
だって貴方は私に勝てないもの。
私に出来ること、貴方の前にやってくるものを途絶えさせること。

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