《MUMEI》

程なく、千秋がバスルームから出てきた。
筋肉質ではないが、引き締まった体をしている。

「上着、掛けてくれたん。ありがとう。」

千秋は冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを取り出した。
煙草とライターをテーブルから取り、ベッドへ近づく。
私に背を向けて、ベッドに浅く腰かけ、ミネラルウォーターのキャップを開けて飲む。

「はい。」

ベッドサイドに千秋がミネラルウォーターを置いてくれた。
私に背を向けたまま、煙草に火をつける。
私は、千秋が置いてくれたミネラルウォーターを少し飲んだ。
千秋の背中にそっと触れる。
煙草を吸う手が止まる。
私は千秋を背中から抱きしめた。
首筋にそっと、口づける。

「千秋の背中、好き。」
「今日は化粧気にせんでええな。」
「うん。」

煙草の火を灰皿で揉み消し、千秋は私の方へ向いた。
初めてお互いの裸を見る。

言葉は要らなかった。
抱きしめる。口づける。
そして、すべてを奪う。

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