《MUMEI》

子供は本当に俺の子供なのだろうか。
生まれてくる子供を、愛せるのか。
何も解決策が見つからないまま、ただ時間だけが過ぎていく。

(…帰るか…)

妻には、今日は打ち合わせで遅くなる、と言ってあった。
もう寝ているかもしれない。
それなら顔を合わせずに済む。

家にたどり着いたときには、もう真夜中だった。
玄関の電気はついていたが、リビングは真っ暗だ。
妻はもう寝ていた。
俺は少しほっとした。
リビングの電気をつける。テーブルにお茶漬けの用意がしてあった。
飲んで帰るときや仕事で遅い日は、いつも用意してくれている。

食器棚からガラスコップを取り出し、冷蔵庫のミネラルウォーターを注ぐ。
半分ほど飲んで、ひと息つく。
ネクタイを外し、ワイシャツのボタンを外してソファに倒れこんだ。
もう、何も考えられなかった。


いつのまにか寝ていたようだ。
寝違えた首が痛い。
体に毛布がかかっていた。妻がかけてくれたのだ。
夜中に起きてきたのだろう。

俺は心を決めかけていた。
今のままの妻なら、昨日見たことは俺の胸にしまっておこう、と。

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