《MUMEI》 俺の心を察して、適切な言葉をかけてくれるところは、以前と変わらない。 「…そうやな。」 俺は、コーヒーを飲み干した。 「…会えて嬉しかった。ありがとう。」 「…私も。ありがとう。」 俺は車を降りて、地下鉄の駅に向かって歩き始めた。 あの日の別れ際は、あんなに心が苦しかったのに、今は懐かしく穏やかな気持ちだ。 夏生の言葉に後押しされたせいだろうか、妻がどうであれ、今の俺は妻を大切に思っている。 …あの言葉、夏生自身に向けているようにも感じられたが… ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 今は私も、お腹の子は夫の子供だと信じていよう。 私はパーキングから車を出し、実家へ向かった。 前へ |次へ |
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