《MUMEI》

私に似ているところなど、数えるほどしかなかった。
…私だけが、本当は誰に似ているのか、知っている。

ベランダの窓越しに、月明かりがほの明るい。
レースのカーテンを閉めているため、眩さはなく、温かみさえ感じる。
カーテンの隙間から、そっと覗いてみた。
…あの日と同じ、眩い月。

千秋とのことは、後悔はしていない。
私は千秋を欲していたし、千秋も私を欲していた。
この先、何があっても私は、この子を守りぬく。
カーテン越しの、この月明かりのように、やわらかく、温かく…


(完)

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