《MUMEI》
疑惑
ほっとしたのは、永井さんが変わらずに接してきてくれたことだった。

告白して、恋が成就しなかったことで急に話せなくなるという男女の話はよく聞く話だ。

「彼女の名前、何て言うの?」

「環さんだよ」

「タマキさん?かわいい名前。かわいい人?」

「……うん。かわいいよ。寂しがり屋だし、純粋だし……。彼女といるといつも思うんだ。オレって…幸せ者だなぁって」

「何ノロケてんのよ。嫌味?」

「ち…っ違うよ!そんなつもりで言ったんじゃないよ」

「わかってるわよ。何必死になってんの」

そう言って笑う永井さんは嘘の無い笑顔を浮かべていた。

少なくとも、オレはそう思う。

「そういえば春日くんの映画、もうすぐ公開だよねっ!楽しみ〜」

「みんなで見に行かない?春日くん拝みに」

「行く行く!絶対に行く!!」

「あぁ……夏坂環になり変わりたい」

「どうでもいいけどさ、夏坂環って最近写真撮られてなかった?」

「えぇ!?誰と?」

「佐原旭(さはらあさひ)」

「マジ〜?」

「かわいい顔してんのに結構やるね」

「かわいい顔してるからモテるんでしょ?」

女子の会話を聞いて、気がおかしくなりそうだった。

環さんが佐原旭さんと?

環さんはオレの恋人なのにどうして?

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