《MUMEI》 ◇◆◇ 陽が落ち、辺りは闇に閉ざされた。 天には、ただ半分に欠けた月が、ぼうっと浮かび上がっている。 「‥‥‥‥朧月だな」 その声に、咲弥はびくりとした。 「草薙───」 「‥‥すまん、驚かせたか」 「ううん、少し惚けてたものだから」 「‥‥黒蝶は‥また屋根か」 「うん。あの場所が一番落ち着く‥って」 「‥‥‥そうか‥」 「ねぇ、草薙も月を見に来たの?」 「‥‥いや、只‥姫君がどうされているかと」 「私は大丈夫。草薙は休まなくて大丈夫なの‥?」 「──そうだよ、もう寝た方がいいぞ?」 「‥黒蝶‥」 「咲弥はあたしが付いてるから大丈夫だって」 「‥‥‥‥ああ」 黒蝶に押され、半ば強引に草薙は踵を返す羽目になった。 ◇◆◇ 前へ |次へ |
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