《MUMEI》
異邦の彼
「お早うございます」

好感が持てる笑顔。
この子は私の最も恐れていた事をしてくれた。

「ねぇ、私は貴方を殺したい気分だわ。」

私から昭一郎さんを奪おうとする。

「貴方もですか。国雄を目の敵にして。
あれは確かに最悪ですけど、彼をそうさせたのは周りがそうやって彼を追い詰めたからだ。」

強い意思を持つ目付きで目を逸らさない。

「あれの存在を肯定するのね。」

私は否定し続けて昭一郎さんを守ってきたのに。

「認めなかっただけでしょう?」

違う
……すぐに声が出ない。

「俺は分かりますよ。嫌わないと好きになるから皆嫌うんだ。
そういう理屈で説明できない、呑み込む力が国雄にはある。」



「 例えばの話よ? 

そうだったとしても、私は絶対好きな人を愛していたい。他の人に奪われるくらいなら死んでいい、殺していい……」

形に示して証明したい。

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