《MUMEI》

その瞬間。


「キャア!」


俊彦がガシッと私の太ももを掴んだ。


「な、な、何、急に?」


私は俊彦から離れた。


「だから、あの夜の再現だってば」


俊彦は、勢いよく起き上がった。


「蝶子が俺のパンツ下ろそうとしたから、慌てて太もも掴んだんだ、今みたいに」


「そ、それで?」


「蝶子が離れたから、安心して起き上がった」


「…そう」


今と同じ状況に、私は少しホッとしていた。


「そしたら…」


?


俊彦がその先を言うまでは時間がかかった。


それもそのはずだ。


「無理! 出来ない!」


「できるよ!やったんだから!」


そして、俊彦は優しく言った。


「だから、あの時みたいに、足、…開いて」


ーと。


「…こ、この、位?」


私が少し足を開くと、俊彦は首を横に振った。


「じゃあ…」


「まだまだ」





(これは、無いわよね)


私は、ほんの一瞬。


スポーツジムで太ももを鍛えるマシンで広げた位、足を開いてみた。


「それ!」


閉じようとした足を俊彦に思いきり掴まれて


バランスを失った私は、ベットに仰向けに倒れた。


「でね…」

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