《MUMEI》

「貴方が連れてこなければ良かったのに。」

眞知子は上着の内ポケットに手を入れた。

「いずれは来るはずだったんですよ。」

光は国雄の存在を認めさせようと必死だった。

「もしも、よ?

私が貴方を撃ち殺せたら」

内ポケットの指が硬質なものに触れた。

「殺さないくせに。」

光は挑発する。

「貴方にはきっと緋が栄えるわね

きらきらと雪と一緒に輝くのだわ。
貴方のために沢山の人が泣くのでしょうね。」

眞知子が瞼を閉じながら想像したのはモノトーンの葬儀だ。

「でも、俺を心底思って泣いてくれるのは唯一人しかいない。」

光は瞼を閉じながら想像したのは国雄だった。

「……貴方は私からそれを奪ったのよ?」

眞知子の指が動く。




「ままあー、がっこうー」

子供達の声が聞こえた。
眞知子を引き留めるストッパーだ。

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