《MUMEI》 「さよなら」 眞知子の指は光の眉間を打ち抜く。 光は目を閉じる。 カチッ 車のエンジンがかかり始めた。 眞知子の親指は車のキーのエンジンを切り替えるスィッチの上だった。 光はその場で倒れたふりをする。 両手を胸に当ててみた。 眞知子はこれから子供を学校へ送って行かなければいけない。 時間が無いので急がなければいけない。 眞知子は女である前に母親だった。 半分雪に埋もれながら光は眞知子が発つまで見送った。 前へ |次へ |
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