《MUMEI》

「情けない。何しとんや俺は!」
あの子にカッコ悪い所を見られ、迷惑を掛けてしまった。

暫くすると、彼女が戻って来た。震える手でペットボトルをあけて傷口を洗い流し、消毒液で手当てをし、タオルを巻いてくれた。

傷口を見て、怖かったのだろう。彼女の顔は涙で濡れていた。

「本当にありがとう。出掛ける処やったんやろう?ホントごめんね」

俺は何度もお礼を言い、何度も謝った。

同じ言葉を繰り返す俺が可笑しかったのか、涙目で「さっき、気を付けてって言ったばっかりなのに」
そう言って笑った。

「ホントやね」
そう言って2人で笑った。

彼女は「バイクどうするの?」

俺は立ち上がり愛車を一通りチェックしてエンジンを掛けた。
「大丈夫、何とか乗って帰れそう」

「良かった、じゃあ、私、帰るね」
そう言ってヘルメットをかぶった。

「ありがとう。ホント助かった。」

「じゃあ、気を付けて帰って下さいね。」
笑いながらそう言って帰っていった。

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