《MUMEI》

俺は愛車をゆっくりと走らせた。
無様な転倒をしたにもかかわらず、浮かれ気分で家に戻った。

家で着替えると、近所のコンビニに歩いて行き、頭痛薬、消毒液、キズスプレー、ガーゼ、包帯、そしてパンとカップめんを買いだめした。

不器用ながらも自分で手当てをしてカップめんを食べた。
その後頭痛薬を飲んだ。
頭痛薬には鎮痛効果があるので麻酔変わりに飲んでおく。
(よい子はまねをしないで下さい。笑)

が、言うまでもなく、その日は痛くて眠れなかった。

「彼女へのお礼はどうしよう…家は知ってるが携帯の番号聞いとけば良かった」

家には行きにくいし、待ち伏せするとストーカーみたいだし…
俺は後悔していた。

結局は取り越し苦労だったのだが…

次の日、「祖父が危ない」と会社に嘘の連絡をし、3日間の有給を貰って治療に専念したが、完治する訳もなく、気付かれない様に仕事をした。

行き着けのバイク屋さんに連絡して、バイクも取りに来てもらった。
壊れた部品は交換し、カウル類は修理してもらった。マフラーは中古の車外品を安く手に入れた。
愛車は完治したが、俺が完治するまで預かってもらう事にした。

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