《MUMEI》

その姿は間違いなく、名波先生だった・・・

私は持ってる雑誌で、顔を隠した。先生は病院内に入り受付をしている。
受付係の人とも顔見知りのようだった。

あの様子は明らかに、お見舞いではなく、自分の治療に来ているという感じだ。

偶然にも私の前に、腰掛けた・・・。何の病気で?
でもここは普通の内科ではなく、心療内科だから、心の病気に違いなかった。

「名波さん。あれ?今日学校は?」

たまたま通り掛かった、例の女の先生に声をかけられている。

「今日は振り替え休日なんです。」
「そう。最近症状は?」
「ほとんど出ないです。」
そんな会話をして、詳しくは後で・・・という感じで別れた。



・・・私は母と別れ、病院の玄関付近にあるベンチに腰掛けていた。
どうしても、どうしても、先生の病気が気になってしかたがなかった。あれから2時間ほど経過したが、先生が出てくる気配はない。

目を閉じていると、秋の柔らかな風が心地良くて、私はいつの間にか眠りについていた。

ふと頬に何かが触れ、私はゆっくりと目を開いた。

「こんなところで寝てたら、風邪ひくぞ。」

ぼんやりとした意識の中で、その姿が先生であることにやっと気が付いた。

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