《MUMEI》 カオリは、花子に支えられながら、下りのエスカレーターに差し掛かる。 その瞬間、花子はサッと周囲を警戒した。 2階のフロアには花子達以外には誰も居ない。 1階のロビーには、まばらな人影があるものの、誰ひとりとして頭上を気にする者は居なかった。 ――…大丈夫……誰も見てないわ…! カオリの右足が、エスカレーターのステップに伸びる…。 ――…今よ!……突き落とすのよ!……殺すのよ…!! 「―――…この、泥棒猫が!」 花子は殺気を込めて、カオリの耳元で唸るように口走った!! 前へ |次へ |
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