《MUMEI》
女村 四
「あっ…つう(五)」
五、四、三は怯えていた。
「餓鬼が…ぁ‘子’は何処だ…」
女は顔を鬼相に変え、奥の者を守るようにして3人へ向かってくる。
《人を傷つけてはダメ》
沙羅の言葉を守るため、まだ人の臭いのする女に抵抗出来ずにいた。
このままではやられてしまう。
『結!!』
結(ケツ)、それは身を束縛する意にあたる。
その場合、沙羅が言霊として言えば相手は動けなくなる。
逆に放(ハウ)と言えば解放される。
さらに結(ユウ)で結ぶとなり、いわゆる結界を張る。
「ヤバいぞっ、魚、足持ってやがる!追いかけてきたーー!!(六)」
キモ!!(by栖軽)
「その前になんとかする!」
意識するのは女性の瞳だ。
『汝の中に在りし凶(マガ)を出されよ!!』
大気、水、火、風、土、物に潜む精霊が、沙羅の言葉に呪力を持たせる。
「ゴホッゴホッ」
女性の口から黒い球が出て待って奥にいる者に帰ってゆく。
女性は体勢を崩し、倒れてしまう。
「みんな!その人をお願い!!」
次は大魚だ。
『己の場所に帰り給(タマ)え、汝の名は、凶(マガ)なり!!』
大魚は蒸発し、奥へと戻る。
「ようやく見つけたよ、沙羅」
声が聞こえる。
「……何故、その名を知って……?アナタは誰」
その人は、立ち上がりこちらへやって来る。
「20年間、お前を捜していた…そしてこの村に罠をはっていたのさ。
世羅(セラ)の子、お前を!!」
何故母様の名を…?
「どうしてっそれを!!アナタは誰ですか!?何故僕を知っているんですか!?」
世羅、母様の名に熱くなる。
「おっと、言霊を使おうとしたね?…それをかけられちゃ、たまんないからね。
あたしは蛇々だよ。覚えておきな?自分を狙う者の名もわからないんじゃね。」
狙う…?
「知りたいか?自分が狙われるワケ……」
沙羅は無言で返した。
「ははっ、教えてあげようか。聖(ヒジリ)一族は…髪が黒い者は生まれない」
月光で今わかった。
蛇々の髪は、こちらから見て右だけきれいに黒い。
左は違うのに。
目もそうだ。
右目だけ真っ黒。
「…あたしだって本当は黒くない。
…けど、世羅があたしに呪いをかけた。」
憎しみの籠もった声。
蛇々は…母様と何か関係しているのだろうか。
それは神が定めた運命。世羅と蛇々…2人は何とも辛い運命があった。
沙羅、それを乗り越えて…
わたしたち精霊は、沙羅が何よりも大切
大切な沙羅………………
真実は常にそこにある
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