《MUMEI》 (すみません…私も無理でした) 私は、心の中で咲子さんに謝った。 「ごめんね、咲子さん。俺、琴子にいろいろ頼まれててさ」 「わかってるわよ。掃除に買い物…、最近は夕食も作ってるんですって?」 咲子さんの言葉に和馬は照れながら、『まあね』と答えた。 「あの、…俺」 「結子と、でしょ?」 雅彦は赤くなり、頷いた。 「…あんたは、言わなくていいから」 咲子さんは、孝太の肩をポンと叩いた。 孝太は無言で頷いた。 「俺は…」 私を抱き寄せる俊彦に その場にいた、双子と俊彦以外の全員が 声を揃えて 「言わなくてもいい」 ときっぱり言った。 俊彦は、ものすごく残念そうな顔をした。 それから、咲子さんは双子を学校に送り出し、『シューズクラブ』の四人をカウンター席に案内して、コーヒーを振る舞った。 四人は、先に朝食を咲子さんからもらってから、作業をしていたらしい。 「どうして起こしてくれなかったんですか?」 「だって、…ねぇ?」 咲子さんがカウンターの四人に同意を求めると、四人は深く頷いた。 「…ますます、フェロモン増してるしな」 前へ |次へ |
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