《MUMEI》

結子さんは一人娘だから、雅彦が婿入りして、『村居雅彦』から『細木雅彦』になったらしい。


「…ていうか、何で、俊彦知らなかったの?」


「そうだ!たった一人の兄貴じゃないか!」


「え? 言ったよ?」


雅彦はサラリと答えた。


「十一月の最後の火曜日の仕事終わってから。

来年から、結子とずっと一緒に暮らすって」


ーと。


「あ? …」


俊彦は、少し間を置いた後…


「あぁぁ!」


と叫んだ。


そして、心配して近付く私に、『その後のインパクトが強くて忘れてた…』と囁いた。


「…蝶子が可愛い過ぎるからだ」


「人のせいにしないでよ」

囁き合う私達を見て、雅彦と結子さんが笑っていた。

「式はどうするの?」


咲子さんの質問に、雅彦と結子さんは『ここでパーティーやってもいいですか?』と訊いた。


「…ここ?」


「「思い出がいっぱい詰まってるから」」


雅彦と結子さんの言葉に、咲子さんは嬉しそうに微笑み、頷いた。


「実は、ドレス、もう作ってるんです。後は…」


「有理がビーズ刺繍できるわよ。理美にも、声かけるわ」


目が合っただけで、愛理さんはすぐに答えた。

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