《MUMEI》

春樹さんの姉の夏樹(なつき)さんは、春樹さんより六つ年上だった。


夏樹さんは県外で、全国チェーンの花屋の店長をした。


『三十までには結婚して実家を継ぐから』


「そう言って、出てったくせに、来年の夏で三十になるのに帰ってこないし!」

春樹さんの『春』は『新春』の春で、春樹さんは来月二十四歳になる。


「いい加減、婿に来てほしいんだけど」


ため息をついた瞳さんは、先月既に二十四歳になっていた。


その言葉を聞いて、薫子さんは克也さんを見た。


「…未だに同棲中らしい」

克也さんは申し訳なさそうに、五つ年上の兄・竜也(たつや)さんの近況を語った。


「結婚する気はあるのよね?」


「本人達はね。ただ、相手の両親が、まだらしい」


克也さんの言葉に薫子さんはため息をついた。


愛理さんと相田さんは、お互い焦りはなく、まだまだ『ゆっくり付き合いたい』と言っていた。


和馬は、すぐにでも結婚したい様子だが、琴子は『和馬が自分の両親と仲直りしてからね』と言っていた。

(俊彦はどうなんだろうな…)


私は、いつかはしたいとは思っていたが、それほど焦りは無かった。

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