《MUMEI》
霜柱
渦を巻く風の音が何も無い空から鳴り響く。

「さび……」

風の吹く音で耳が冷える。
一日、頭の中整理した。
仕事もまともに手に着かなかった。

「くにおー!」

光が手を振る。
その手は幹祐と結んであって気になるところだ。


「……こんにちにゃん。」

幹祐がかちかちな顔だったから緩和させようと試みてみる。

「お帰にゃん。」

光が当然のように返す。

「なんで猫…………だ、にゃん。」

照れ臭そうに幹祐も返してくれた。

「猫、好きだったよな。
飼ってた時、1番お前が可愛がっていた。
動物なんて恩知らずによく世話出来るなとか、思ってたけど今なら分かるよ。」

居るだけで慰められる。

「……俺のこと、見てくれてたんだ。」

弾かれたような面持ちだった。そりゃあ見ていたさ。

「視野が狭い訳じゃ無かった、離れてただけだ。」

弟に悪影響は与えられない。

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