《MUMEI》
約束の指輪
「チクショ〜、俺、いつでも婿に行けるのに…」


「俺だって…何で、誰も見てくれないんだよぅ…」


一番最後に残った祐介さんと勇さんは、カウンター席で肩を並べて語り合っていた。


勇さんの話では、兄の悟さんは先月の旅行以来、愛理さんのいとこの理美さんと親しくしているらしい。


「「ねぇ、蝶子ちゃん。俺達、そんなに魅力無い?」」


二人はカウンターにいる私を見上げた。


咲子さんは、双子の枕元にプレゼントを置く為に、先に二階に行っていたから、『クローバー』の店内には私達三人しかいなかった。

「そんな事無いですよ。料理できて、面白い人って素敵だと思います」


私の言葉に二人は目を潤ませた。


「「ちょ…」」


「おい、タクシー来たぞ!」


バタンと勢いよく入口が開いて、俊彦が入ってきた。

俊彦は、少し前に店を出た瞳さんと春樹さんを見送りに、外に出ていたのだ。


「「ハい!」」


祐介さんと勇さんの返事は同じ所で裏返った。


俊彦は、そんな二人を連行して行った。


「…片付け、終わった?」

「これで、終わり」


私は二人分のグラスを食器棚に戻して、エプロンを外した。

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