《MUMEI》 『クローバー』の戸締まりを終えた私は、俊彦と手を繋いで俊彦の家に向かった。 「星、綺麗ね」 白い息を吐きながら、私は満天の星空を見上げた。 「…うん。綺麗だ」 「…ね」 私が、俊彦に微笑みかけると、俊彦は、笑いながら『蝶子が』と言った。 「…」 私は真っ赤になってうつ向いた。 俊彦は、家に着くと、すぐに私を自室に連れて行った。 「先に…お風呂、入りたいんだけど」 「そのままでいいよ。…後ろ、向いて」 「?」 私は、言われた通り、俊彦に背を向けた。 首筋に、冷たい感触がした。 「…ネックレス?」 銀色のチェーンには、男物の指輪が通されていた。 「ねぇ…これって?」 私が振り向くと、俊彦は同じデザインのネックレスをつけているところだった。 ただし、俊彦のネックレスに通っていたのは、女物の指輪だった。 俊彦は、私のオデコにコツンと自分のオデコをぶつけた。 そしてー 「ちゃんと、蝶子の親に認めてもらえたら、これ、俺の指にはめてくれる?」 と言いながら、私の胸元に光る指輪に触れた。 「それって…」 俊彦は、黙って頷いた。 前へ |次へ |
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