《MUMEI》

帰りの峠道で、転倒したコーナーに自分の幻影を見ながら

「情けない」

そう呟いた。

帰りにバイク屋さんに寄ってみると、俺の愛車は完治していた。

店長が「もう治ったん?」と聞く。

「全然、まだ膝が曲がらん」

「怪我人は大人しくしとかんと治らんよ。バイクはもう治っとんのに…」
そう言ってカギを渡してくれた。

「うん、今日はちょっとお礼に行ったから…」

「おった?」

「いや、おらんかった」

「キュルルルプワァン」

「早う治さんとエリ%□▲※*≠◎≦▽■‰〆」
俺は、エンジン音で良く聞き取れなかった。
サイレンサー交換で良い音がしていた。そのせいもあり、早く走りたくてウズウズしているように思えた。

「俺が完治したら、またヨロシクな」そう言ってタンクを撫でた。

店長にカギを渡して帰ろうとすると「治ったら電話して、バイク持って行くから」

「うん、お願いします」
そう言って家に帰った。

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