《MUMEI》
解決?
「すごいや、蝶子!」


「ちょ、こんなとこで…」

俊彦が後ろから私に抱きついてきたから、私は慌てた。


私達がいたのは、宗方家の玄関前だったから。


「この調子で、俺達もうまくいくといいよね」


「うん…」


俊彦の言葉に、私は頷いた。


すると


「お取り込み中申し訳ありませんが…」


「は、はい?!」


ドンッ


「うわっ!」


いつの間にか、私達の近くに割烹着姿の女性がいたので、私は思わず俊彦を突き飛ばした。


「私は、宗方家の家政婦をさせて頂いている者です。旦那様がお呼びです。

…どうぞ」


「私を、…ですか?」


家政婦は無言で頷いた。


「…俺も行く」


「ご自由に。和馬坊っちゃんも、『あいつは絶対、ついて来る』とおっしゃっていましたから」


「当たり前だ」


体勢を立て直した俊彦は、私を抱き寄せた。


「ちょっと…」


赤くなる私に、俊彦は『いいから』と小声で囁いた。

「では、こちらへ」


家政婦は、顔色一つ変えずに私達を案内した。


「だから、何でだよ!親父!」


「うるさい!馬鹿息子!」

扉の向こうから、激しい口論が聞こえてきた。

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