《MUMEI》

―――…私は磯野花子よ…!

…覚えときなさい…!



エスカレーターの上で仁王立ちする花子――…


見下す視線の先には、糸の切れた操り人形のように身体を横たえるカオリがいた――…



――…首が不自然に曲がり…

…その身はピクリとも動かない…



―――ただ…

とっさに反応した腕が、大切な下腹部をかばうように守っていた。



「うわー!誰かエスカレーターから転げ落ちたぞ!」


「だ!大丈夫ですか!?ちょっと誰か!救急車を呼んで!」



1階のロビーでは、カオリの悲鳴と転落の音を聞きつけた客や、ホテルの従業員らが集まってきた。

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