《MUMEI》
どうしよう!



『―――♪♪♪♪♪♪♪♪――――』



「―――うーん…」
「…惇の携帯鳴ってる」
「――動きたくない」
隆志は俺の頬にキスするとベッドから出て行った。

すると途端に寂しくなって胸が苦しくなって!



「隆志!ヤだよ、寂しい!早く傍に来て!」


「バカだなー、惇の携帯取りに行ってやっただけなのに」


隆志は直ぐに戻ってきてベッドに滑り込むと、長い手と長い脚を俺に絡ませギュッと抱きしめてくれた。


「――甘えんぼ」



「甘えんぼだもん」




ゆっくりと近ずいてくる唇。



俺も瞼を閉じ、隆志の唇を待つ。



するりと太股を撫でられ、唇が触れる前にハァと、俺の甘い呼吸が漏れた。




『♪♪♪♪♪♪♪』



「……」


「……」



鼻筋をかすめて、すぐにでも唇がくっつきそうな状況でお互いに目を開けた。



「―――はあ」



隆志は俺から離れベッドヘッドに寄りかかり俺もまた寄りかかった。


「――もしもし」



『おい惇!何回かけさせれば気が済むんだ!』


「――――――――――――…え?」


『え?じゃない!自宅にかけたって出やしないし事務所にかけたって休みですって言われるしで!
惇!お前今何処にいるんだ!?俺ずっと惇のマンションの前で待ってるんだぞ!?』


「――――――――」




「――どうかしたのか?顔…青いけど」


「――あ?いや、えっと…」



『男の声?……惇、今誰かと一緒なのか?』



「―――――――」




――酷く心配そうに俺を見つめる隆志。




きっと今の俺血の気が引いて真っ青なんだろう。




だって耳鳴りする、




頭ん中、…変に熱い。




――兄貴……




兄貴か。




兄貴にどうやって返事したかほとんど覚えていない。




俺は携帯を足元に投げ、隆志にギュッとしがみついた。




「――お兄さん何だって?」


「―――何で兄貴って分かんだよ」



「だって惇、兄貴ってしか言ってなかったぞ?――他の単語一切言わなかったからそうかなって…」



「―――――マジかよ…」




もう隆志とキスしたいとか甘えたいとかそんな気分は一切がっさい吹き飛んだ。



俺はのそのそとベッドから降りバスルームへ足を向ける。



「おい!なんかふらふらしてるぞ!」



隆志に肩を掴まれた。

その手があんまりあったかくて優しくて…

「ウァアア〜ン!最悪だあ〜〜ッ!」



――俺は隆志の胸に飛び込み、バカみたいに泣きじゃくりだした。


なんか…


嫌な予感



最悪な予感…

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