《MUMEI》

俊彦が、口を開いた。


「俺の弟も、婿に行くけど、両親と縁が切れるわけじゃないです。

寂しかったら、近くに住めばいいんじゃないですか?
よくわからないけど、作家さんなら、どこでも仕事できるでしょう?」


「俺はここが気に入っている」


「そうですか…」


(やっぱり、駄目かな?)


雅彦のように簡単に婿に行くのは、無理かもしれない。


孝太が、婿に行くのも私達の希望であって、現実味もない。


「しかし、老後の田舎暮らしは、憧れもある」


明日馬さんの言葉に、私達四人ははうつ向いていた顔を上げた。


「可愛い孫を、作ってくれるなら、…認めてやる」


「任せろ!」


和馬の言葉に、琴子も、赤くなりながら、頷いた。


「今度こそ、解決?」


俊彦の言葉に、私は笑顔で頷いた。


「じゃあ、私達はこれで…」


「ちょっと待った!」


「「はい?」」


明日馬さんの声に、私と俊彦は振り返った。


「…まだ、何か?」


恐る恐る訊くと…


明日馬さんは、『お礼がしたいから』と言い出した。

最初は断ったが、和馬に『ある事』を耳打ちされた俊彦は、『泊まっていこう』と笑顔で言った。

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