《MUMEI》
宿泊
「…というわけなの」


《それじゃ、仕方ないわね。まぁ、元々正式な挨拶は明日の予定だったし》


そこまで言って、華江さんは父と交代した。


《蝶子、大丈夫か? 俊君に変な事されてないか?》


ギクッ


私と俊彦は、宗方家のゲストルームにいた。


「大丈夫よ」


(多分…)


一緒に泊まると言っても、ここは、和馬の実家だ。


明日馬さんも、先ほど帰宅した真理子さんも、住み込みの家政婦も、和馬も琴子もいる。


《本当に?》


「うん。明日、お昼にはそっちに行くからね」


《気をつけておいでね!待ってるからね! あ、ほら!友和も!》


《ちょこちゃん、はやくきてね》


「うん」


《あいしてるよ》


(両親の真似かな?)


父と華江さんはとても仲が良かった。


《ちょこちゃんは?》


私は、可愛いなと思いながら…


「私も、愛してるよ」


と言ってから、電話を切った。


「蝶子…」


「ん?」


荷物を整理していた俊彦が、ベットに座る私に近付いた。


「今の、何?」


「何って…友君、だけど?」


友君が私の弟であることは、俊彦も知っていたのに…

「ンッ…ッ…ン〜!」

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