《MUMEI》

俊彦が急に激しく唇を重ね、舌を強引に入れてきた。

ドサッ


「ちょっ…待って!今から、夕食…ッ…な…んだからア…ッ!」


「俺以外の男に『愛してる』なんて言った蝶子が悪い」


俊彦が、私のスカートの中に手を入れてきた。


「そん…なッ…」


着ているセーターもまくり上げられた。


コンコンッ


「はい?」


俊彦は、私の口を手で塞ぎながら、返事をした。


「夕食の支度ができました。

旦那様からの衣装もお持ちしたのですが…」


「今行きます」


俊彦は扉を開けて出ていった。


(あ、危なかった〜)


私は、呼吸を整えて、ゆっくり起き上がった。


俊彦に抱かれるのは嫌ではない。


無いけれど、この状況では、抵抗があった。


それに、本当なら、今日は、私は実家で過ごし、俊彦は、ビジネスホテルに泊まる予定だったのだ。


和馬と琴子の挨拶が、いつ終わるかわからないから、私達の挨拶は、翌日にすることにしていて、俊彦は、一人でホテルで挨拶の練習…


(なのに、こうなってるし…)


いつもは心の準備をしているからいいが、予期せぬ展開に、私はまるで初夜のように緊張してしまっていた。

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