《MUMEI》

戻ってきた俊彦は、上機嫌だった。


私の衣装が、白いワンピースで…丈がかなり短かったから。


「着替え、手伝ってあげるね」


「…いい」


「まぁまぁ…」


そして、結局私は俊彦の甘い言葉と慣れた手付きに流され、着替えさせられた。

「さ、行こう」


黒いスーツに身をつつんだ俊彦は、悔しいけれど、王子様のように見えた。


私は、差し出された手を素直にとって、食堂に向かった。


食堂には、明日馬さんと真理子さん・和馬と琴子、それに…


琴子の両親の、裕太さんと孝子さんがいた。


「あれ、もしかして、孝太と琴子ちゃん…の?」


俊彦の言葉に、私は、頷いた。


(やっぱり驚くわよね)


着飾った二人のデザインは少し派手で、シンプルを好む孝太と琴子とは正反対だった。


二人はいつものハイテンションで、明日馬さんに挨拶をしていた。


「あら、あらあらあら?!」


私に気付いた孝子さんは、目を丸くして、私に歩みより、私と俊彦を交互に見つめた。


(まずい…)


孝子さんは、私と孝太をくっつけようとしていた。


「こんばんは」


俊彦は、孝子さんに向かって極上の笑みを浮かべてみせた。

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