《MUMEI》

「この子、いいなあ〜。私、こんな子が欲しかった!」


真理子さんはそう言って私を強く抱き締めた。


(く、苦しい…でも…)


『何この子!可愛い〜!』

?


私は、似たような経験がある…ような気がした。


「やめて下さい。…俺のです」


「あら、ごめんなさい」


俊彦に言われ、真理子さんは私から離れた。


?


『やめてよ!俺の妹みたいに大事な子なんだから!』

『ふぅん?妹?』


『とにかく、離れてよ!』

『わかったわよ、ごめんね』


??


「蝶子?」


俊彦が私の顔を覗き込んだ。


「ねぇ、俊彦。昔…小さい頃、同じ事した女の人、いなかった?」


「あぁ、それは…」


言いかけて、俊彦は何かを思いついたようだ。


『ちょっと失礼します』と言って、俊彦は、『誰か』に連絡をしていた。


?


朝食後、早めに私達は宗方家を後にした。


千葉に向かう快速の中で、俊彦に電話の事を訊くと、『今は秘密』と笑った。


そして


「もしかしたら、蝶子は皆のキューピッドなのかも」

と言って笑った。


私は、正直それより、自分の事を何とかしたかった。

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