《MUMEI》 私が和馬の母・真理子さんに抱きつかれた時に蘇った記憶は 初めて私が夏樹さんに会った時のものだった。 当時、私は保育園に通っていて、仕事で残業がある父にかわり、雅彦を迎えにきた小学生の俊彦と一緒に帰る事が何度かあった。 その時、会ったのが夏樹さんだった。 夏樹さんは、昔から背が高く、初めて会った時には、今の結子さんと同じ位の身長があった。 だから、私は夏樹さんを、『大人の女の人』と認識していたのだった。 そして、夏樹さんは何故か私がお気に入り…だったらしい。 『会うたびに、あんまり抱きつくから、蝶子、途中から逃げてたから』と、俊彦が説明してくれた。 多分… 私は、夏樹さんが怖かったのだと思う。 だから、記憶に蓋をして、夏樹さんの事を忘れてしまっていたのだ。 「…本当に、帰ってくるし。俺の、今までの苦労って一体…」 「蝶子が帰って来たら、すぐ連絡してたら雅彦に先越されなかったかもね」 苦笑する春樹さんに、瞳さんがトドメを刺した。 「それじゃ…」 二人は、私を見て、頷いた。 「可愛い蝶子が戻ってきたんですもの。 私だって、戻るに決まってるじゃない」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |