《MUMEI》

そう言って、夏樹さんはまた私を抱き締めた。


「いいよなあ…これで、問題抱えてるのは、俺達と克也達だけか…」


俊彦は、そう言って、ため息をついた。


その言葉に、春樹さんと瞳さんが顔を見合わせた。


「「…」」


二人は、少し迷っていた。

そして


春樹さんが、俊彦の肩を叩いて言った。


「ごめん、俊彦」


「?」


俊彦は、不思議そうな顔で、春樹さんを見つめた。


「落ち着いて、聞いてくれ」


「ま、まさか…」


(まさか…)


私も、俊彦と同じ気持ちで、春樹さんの言葉を待った。


そして、春樹さんは


「龍兄(たつにい)、やっと認められたんだ、結婚」


と言った。


それは、つまり


龍也さんが猪熊家を継ぐので


克也さんは、婿に行けるから…


「明日、俺達と一緒に、克也と薫子も…

婚姻届、出しに行くんだ」

「そんな、馬鹿なぁ〜!!」


駅前に、俊彦の悲しい絶叫が響いた。


つまり、それは


結婚願望のある商店街の恋人達の中で…


年末年始の間に


私と俊彦以外の全ての恋人同士の問題が解決してしまった事を意味していた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫