《MUMEI》

(気持ちはわかるけど…)


「失礼よ、俊彦」


カウンター席に座り、ため息を繰り返す俊彦に私はカウンターから声をかけた。

「だって…」


俊彦の言いたい事はわかる。


あれから毎日俊彦は祖父に電話して、山田家の人々と会う機会を作ろうとしていたが、祖父はまともに相手をしてくれなかった。


(私がしたら、また『お盆の時の彼氏の方が蝶子に合ってる』って言われるだろうし…)


祖父は、俊彦より孝太を気に入っていた。


しかし、それはできない。

私が本当に好きなのは、俊彦なのだから。


俊彦は、また大きくため息をついた。


すると


「「やっと俺達の気持ちがわかったか!」」


祐介さんと勇さんが嬉しそうに俊彦の両側に座った。

「…同じじゃない」


「そこは、ラブラブなんだからね」


少し呆れた口調で、孝太と麗子さんもそこに加わった。


幸せな四組の夫婦と、結婚間近の一組の恋人達は、テーブル席に固まっていた。

他の、まだ結婚は意識していない人々は、立ったまま話をしていた。


パーティーは、自然と二次会に移っていた。


「少しは苦労しろ」


孝太がニヤリと笑った。

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