《MUMEI》

…香織さんの細い指が、頬をつたって首筋へ下りてくる。

そして、喉を優しくなぞられる。



「…ちょ、か、香織さん!?」



くすぐったくて抵抗すると、



「…あら、ごめんね」



と、香織さんははっとしたように手を離した。



「…泣き顔があんまり綺麗なもんだから、ついね〜」


「…な…っ!!」



微笑む香織さん。


―…香織さんが言うには、自分の好みの男のひとは放っておけないらしい。


うちのママと、好みのタイプ似てるからなあ…



「もう!―…椎名くんは高校生だよ!
…しかも、中身は私なんだからね!!」



私が言うと、香織さんは、キョトンとする椎名くんに向き直った。



「…はいはい。―…じゃあ椎名くん、元に戻った時、いつでもいらっしゃいね??
センセーがいろいろ教えてあげるから♪」


「香織さん!!!」


「―…冗談よ、ジョーダン。
……でも、わき腹弱いなんて、ますます可愛いわね〜」



一体どこから話聞いてたんだろう…


悪びれない様子の香織さん。


…でも、笑えない冗談だよ…
椎名くん、気をつけて。




―…椎名くんの美貌(?)、恐るべし。

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