《MUMEI》
『お願い』実行
一月最後の日。


昼間、夏樹さんと冬樹さんの結婚式と披露宴が、新幹線の停まる駅前にあるホテルで行われた。


会場をホテルにしたのは、県外に住む冬樹さんの出席者を配慮しての事だった。

夏樹さんが店と家を継ぐので、冬樹さんは婿養子になった。


商店街の皆は、とにかく披露宴を盛り上げた。


冬樹さんの親族は、その一体感と温かな雰囲気に安心した様子だった。


私は夏樹さんから、『二次会も、三次会も絶対出てね』と言われていた。


三次会まで出ると、ローカル線の終電に間に合わないと告げると、夏樹さんはすぐにホテルの客室を予約した。


俊彦は、当たり前のように、私と一緒に、二次会も三次会も参加し…


当たり前のように、私の部屋に入ってきた。


そして…


「この間の、『お願い』今日、聞いてくれる?」


と、質問してきた。


私は、迷ったが…


(俊彦が、元気になるなら、いいかな?)


私はゆっくり頷き、小さな声で『あまりうまくできないかもしれないけど…いい?』と俊彦に確認した。


俊彦は、『いいよ』と言って微笑んだ。


「俺は、何もしないからね」


「…わかった」


(頑張ろう…)

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