《MUMEI》

◇◆◇

「ん、どうした?」

「来たみたい」

 おい、と黒蝶が言うより先に、咲弥は邸から路地の方へと急ぎ足に向かい出した。

 黒蝶がきょとんとしていると、向こうから人影が現れた。

 なるほど、と独り合点し、黒蝶も邸から出た。

「今日は早かったな、珍しく」

 にっこりと笑って黒蝶が言うと、草薙は、とりわけ珍しい事では無いだろう、と呟き慣れた様子で彼女の脇をすり抜けた。

◇◆◇

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