《MUMEI》 「幹祐は俺に甘いよなあ」 国雄は恰好良く笑う。 「違……」 幹祐はまだどこかぎこちない表情だ。 俺と結び付く指先は温かいのだが……。 「先にジィさんとこ寄るか」 国雄の指は俺の脇を摺り抜け恋人繋ぎをする。 多分、仲の良い俺達への対抗意識からだ。 「知ってるか、俺ってジィさんの双子の兄に似てたんだって。」 国雄は形の良い唇から白い吐息を漏らしながら話す。 「聞いてない……!」 幹祐は俺と手を繋いだまま国雄と向かい合った。 「こないだ、バァさんに聞いた。名前もね。」 にや、と国雄の口許が持ち上がる。 「あ、分かった。国雄だ」 閃いた。 幹祐は信じられないと言うような顔付きだ。 「ぴんぽーん。褒美をくれてやろう。」 額に国雄の香りがする。 わざとらしく唇が離れるときに音を起てた。 幹祐は外国ノリで付いていけてない模様。 半場、国雄のハイテンションに呆れたようだ。 でも、国雄のそれは空元気みたい。 本当は不安なんだよね? 前へ |次へ |
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