《MUMEI》

   ガシャン






俺の気配に気付いて乗ってた奴は離れた。

……ざまあ。
最中に止められ行き場の無い熱を溜めているのが間抜けで爽快だ。

ふと、淫乱男と目が合った。

フェンスに指を引っ掛けて肩で息している。
口を歪ませていた。
俺を笑っているのだ。

なんかムカつく余裕。


振り向かないで段ボールを探すが、その日は猫を見付けることが出来なかった。



悔しい。
何もしてやれなかった。

俺が出来ることといえば安否を願うくらい。

俺って無力だ。



可愛がるだけじゃ、守れない。

あの時どうして小学生達に言ってやれなかったのか。
俺も小学生達と同じだったのではないか。







あの猫を殺したのかもしれない。

夢の中で俺はあの淫乱男に笑われた。
夢の俺は突っ立ったままで負けを認めたみたいで屈辱だった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫