《MUMEI》
男子禁制の夜
二月に入ると、『クローバー』には昼夜を問わず、女性陣が押し掛けた。


バレンタインのチョコレートの相談に。


そして、いよいよその日が明日に迫った夜。


『クローバー』は女性陣のみの貸し切りに…


男子禁制の店になった。


当然…


「酷いよ!皆!」


俊彦は、入れないわけで…

入口を叩く俊彦を、女性陣は『うるさい』とどなりつけ、窓のカーテンもきっちりと閉めた。


仕方なく、私は俊彦に、『今夜は行けない』とメールを打った。


明日は、バレンタインであると同時に、俊彦の誕生日で、俊彦は、丁度日付が変わる今夜を二人で過ごしたがっていたのだが、この女性陣の迫力には敵いそうも無かった。


しかも、咲子さんの話によると、意外な事に、薫子さんは『超』が付くほど料理音痴らしいのだ。


(そんな風には見えないけどな…)


私は着物に割烹着姿の薫子さんを見つめた。


(薫子さん、和菓子屋の娘だし…)


逆に、心配なのは、『今日泊まる』と言って、強引に私の部屋に泊まる事になった…


「何? 蝶子?」


「あ、いえ…」


私は、新婚旅行先のハワイでの日焼けがまだ残る夏樹さんに、笑顔を向けた。

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