《MUMEI》
煌メキ
「此処が俺の仕事場だ。」

実朝と長い間話し続けて弱っていた林太郎が見た物は骨董品や名も無い名画達だった。

「凄い……」

感嘆の一言に尽きる。
物言わぬ美術品達は確かにそこで生きていた。

「世に知られる前に亡くなった遺作から贋作師の名作等を収集したんだ。」

実朝の目利きは確かで自ら足を運び目で見て買い付けた。
しかし無計画に金を叩く彼は経営者には不向きで何度か婿入りした家を傾かせては兼松や八尋に助けられていた。


「貴方にこんな才能があっただなんて。」

随分な云い方であるが、林太郎や使用人達には実朝が新し物好きの道楽息子に映っていたからだ。


「地道に売り買いして軌道に乗り始めたんだ。
確かに後ろ盾もあったけれど此れは俺の店だよ。
父には君を計るための道具に過ぎなくてもね。」

実朝は只の馬鹿ではなく、自ら利用されに懐へ入って行く。得る為に手段を選ばない所がある。
八尋を見て覚えたのだ。
少なくとも八尋には綿密な計算の上で成り立っていたが。

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